Camila Cabello(カミラ・カベロ)は、オーディション番組「The X Factor」をきっかけにグループ「フィフス・ハーモニー」の一員として一躍注目を集めました。
しかし、彼女の物語はそこで完結しません。
グループとして世界的な成功を収める傍ら、ツアー先のホテルのバスルームで静かに曲を書き、小型の音楽制作機器ひとつでリズムを組み立てながら、「自分自身の物語」を音楽に刻み続けていたと言われています。
転機となったのが、共演曲「Bad Things」のヒットです。
この成功によってソロアーティストとしての可能性が大きく広がり、彼女はフィフス・ハーモニーを脱退するという大きな決断を下しました。
勇気のいる賭けでもありましたが、結果はすぐに形となって表れます。
2017年に発表された「Havana」は、キューバ移民としてのルーツと軽快なポップスを融合させた楽曲で、世界各国でチャート1位を獲得。
カミラは一気に「ラテン・ポップ新時代」を象徴する存在へと躍り出ました。
デビューアルバム「Camila」も全米1位を記録し、「Señorita」でショーン・メンデスとの共演が話題を呼ぶと、彼女は「グループ出身のひとり」から「確かな世界観を持つ主役」へと大きく立場を変えていきます。
映画出演や社会活動にも精力的に取り組みながら、彼女が一貫して大切にしているのは、移民としてのルーツとロマンティックでドラマチックな物語性です。
フィフス・ハーモニーの一員だった少女が、自分の名前だけで世界のチャートを制するまでの歩みは、まさに現代のサクセスストーリーといえるでしょう。
今回ご紹介したいのは、2022年6月2日にYouTubeで公開されたヨトゥエルを迎えて歌う「Lola」の映像です。
カミラの柔らかく切実な歌声と、キューバ出身でOrishasのメンバーとして知られるヨトゥエルのスペイン語ボーカルが交わる瞬間がとくに見どころです。
英語とスペイン語が自然に重なり、ふたりの声が「Lola」という一人の少女の物語に温度と現実味を与えています。
カミラが歌うLolaは、学校で最も賢く可能性に満ちた少女でしたが、食べ物のために学校を辞めて働かなくてはならず、成長後には停電や食料不足、約束されたはずの夢が崩れていく現実に直面します。
この曲の美しさは、悲劇を大きな声で叫ぶのではなく、ジャズのように穏やかな音色と親密な歌唱で届けるところにあります。
冒頭から流れる柔らかな演奏の上で、カミラとヨトゥエルは激しいパフォーマンスに頼らず、視線や声の陰影だけで感情を伝えていきます。
その静けさがあるからこそ、「誰も耳を傾けないから、彼女はもう話さない」という繰り返しが痛いほど胸に残ります。
華やかなメロディの奥に、見過ごされがちな人生や声なき願いを忍ばせた「Lola」。
カミラとヨトゥエルの歌声が重なるたびにこの物語がただのフィクションではなく誰かの現実として迫ってきます。
歌詞を追いながらふたりの表情と声の温度を味わえば、聴き終えたあとに静かな余韻が残るはずで、今すぐ観ることをとくにオススメします。

