Camila Cabello(カミラ・カベロ)は、オーディション番組「The X Factor」をきっかけにグループ「フィフス・ハーモニー」の一員として一躍注目を集めました。
しかし、彼女の物語はそこで完結しません。
グループとして世界的な成功を収める傍ら、ツアー先のホテルのバスルームで静かに曲を書き、小型の音楽制作機器ひとつでリズムを組み立てながら、「自分自身の物語」を音楽に刻み続けていたと言われています。
転機となったのが、共演曲「Bad Things」のヒットです。
この成功によってソロアーティストとしての可能性が大きく広がり、彼女はフィフス・ハーモニーを脱退するという大きな決断を下しました。
勇気のいる賭けでもありましたが、結果はすぐに形となって表れます。
2017年に発表された「Havana」は、キューバ移民としてのルーツと軽快なポップスを融合させた楽曲で、世界各国でチャート1位を獲得。
カミラは一気に「ラテン・ポップ新時代」を象徴する存在へと躍り出ました。
デビューアルバム「Camila」も全米1位を記録し、「Señorita」でショーン・メンデスとの共演が話題を呼ぶと、彼女は「グループ出身のひとり」から「確かな世界観を持つ主役」へと大きく立場を変えていきます。
映画出演や社会活動にも精力的に取り組みながら、彼女が一貫して大切にしているのは、移民としてのルーツとロマンティックでドラマチックな物語性です。
フィフス・ハーモニーの一員だった少女が、自分の名前だけで世界のチャートを制するまでの歩みは、まさに現代のサクセスストーリーといえるでしょう。
今回ご紹介したいのは、2022年5月14日にYouTubeで公開されたアルゼンチンの歌手マリア・ベセラと共演した「Hasta Los Dientes」のオフィシャルミュージックビデオです。
シャーロット・ラザフォード監督が手掛けた80年代SF映画や架空の宇宙テレビショーを思わせるビジュアル世界がとくに見どころです。
水色のウィッグをなびかせたカミラと、パープルのロングヘアで階段を優雅に降りてくるマリアは、まるで火星から中継されたトップアイドルデュオのように登場します。
レトロな宇宙服やディスコ調の衣装に身を包んだダンサーたちを従え、スペースシップのセットのなかで軽快な振り付けを息ぴったりに踊る姿は、アニメの変身シーンのようなポップさと華やかさに満ちています。
さらにカミラとマリアの歌声と表情の掛け合いも魅力です。
スペイン語で紡がれる切実なリリックを、互いに目配せし合ったり小悪魔的な笑みを浮かべたりしながら歌い継ぐふたりの相性は抜群です。
生々しい嫉妬の感情をキャッチーなディスコビートとラテンポップのリズム感に乗せることで、観ているだけで体が弾むようなポジティブなエネルギーへと昇華させています。
宇宙人の観客やテレビクルーから惜しみない拍手が送られ、ふたりが笑顔で手を繋いでセットを去っていくラストシーンまで徹底してエンターテインメントに振り切った完成度の高さが光ります。
どこを切り取っても絵になるパステルネオンの映像美と、ふたりのチャーミングなダンスを今すぐ観ることをとくにオススメします。

