1990年、オーストラリアの小さな町マラムビンビーで「アメジスト・アメリア・ケリー」として生まれたのが、世界的ラッパーのIggy Azalea(イギー・アザリア)です。
彼女はわずか16歳で単身アメリカへ渡ります。
両親には「旅行」と告げながら、実際は音楽の道に人生をかける決意を固めていたのです。
この大胆な行動からも、成功への強い意志が伝わってきます。
アメリカでの厳しい下積み時代を経て、2011年に動画投稿サイトへ公開した「Pussy」と「Two Times」が注目を集め、一気に話題の存在となりました。
その後、ラッパーT.I.のレーベル「グランド・ハッスル」と契約を結び、キャリアを本格的にスタートさせます。
そして2014年、チャーリーXCXを迎えた「Fancy」が全米チャートで1位を獲得。
同時期にアリアナ・グランデの「Problem」にも参加し、1位と2位を同時に独占するという、ザ・ビートルズ以来となる歴史的快挙を成し遂げました。
その後もイギー・アザリアは精力的に活動を続け、2023年には2年ぶりのソロ曲「Money Come」をリリース。
さらに2025年には複数のアーティストとの共演曲を発表し、常に新しい音楽の可能性を提示し続けています。
今回ご紹介したいのは、2023年8月25日にYouTubeで公開された「Money Come」の映像作品です。
クリスチャン・ブレスラウアー監督が手がけたこのミュージックビデオのテーマをひとことで表すなら、「旧態依然とした権力構造の痛快な打倒」です。
男性だけが牛耳る企業の重役室に、武装したイギーと仲間たちが乗り込み、幹部の男たちを次々と追い出しながら会社全体を女性が支配する王国へと塗り替えていくというストーリーが、圧倒的なエネルギーで展開されます。
銃を手にエレベーターで侵入し、役員室をのし歩き、最後の場面ではイギーが新しい最高責任者として悠然と椅子に腰を下ろすという流れのテンポと映像の切れ味は、4分間まったく緩みません。
「言いたいことがあるなら言ってみろ、むしろ感謝するよ。批判が私の目をお金から離れさせなかったんだから」というフレーズが象徴するように、この曲もこの映像も、批判者への反撃ではなく彼らの存在すら燃料として利用する女性の強さを描いています。
トリッキー・スチュワートをはじめとする実力派の音楽制作者陣が作り出した骨太なビートにのせて、イギーが放つ言葉のひとつひとつが映像のなかの動きと完璧に連動して刺さってきます。
「Fancy」で世に知られ、批判と沈黙の時代を経てリリースされた本格的な復帰作として、この映像にはリアルな人生の文脈がそのまま重なっています。
画面のなかでイギーが権力の座を奪い取る瞬間は、作り話のドラマを超えた現実の宣言として響きます。
再生ボタンを押せば、最初のビートが鳴り始めた瞬間から体が前のめりになり、最後に彼女が椅子に腰を下ろす瞬間には思わず「やられた」と呟きたくなるはずで、とくに今すぐ観ることをオススメします。




























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