トーンズ・アンド・アイ(Tones And I)は、オーストラリア出身の世界的な歌手で、路上ライブからまたたく間に世界的な存在へと駆け上がった異色の経歴を持つアーティストです。
本名をトニー・ワトソンといい、オーストラリアのメルボルン近郊にあるモーニントン半島で生まれ育ちました。
高校卒業後に就職して働きながらも音楽の夢を諦めなかった彼女は、2017年に路上ライブに挑戦するためバイロンベイへと活動の拠点を移します。
初めての路上ライブでその圧倒的な歌声により大勢の人だかりをつくった彼女は仕事を辞め、約1年間にわたってワゴン車で生活しながら演奏と楽曲制作を続ける日々を送りました。
その才能はすぐに世に知れ渡ることになり、2019年2月に音楽投稿サイトへ公開したデビューシングル「ジョニー・ラン・アウェイ」が地元のラジオ局を皮切りに大ヒットを記録。
さらに同年リリースされた「ダンス・モンキー」は、地元オーストラリアのチャートで24週連続1位という驚異的な記録を打ち立て、世界30カ国以上の音楽チャートでも首位を獲得しました。
周囲から常に期待され続けるプレッシャーと哀愁を独自の音楽で歌い上げたこの楽曲には、彼女の比類なき歌声の魅力がぎゅっと詰まっています。
今回ご紹介したいのは、2024年4月18日にYouTubeで公開された「Just A Mess」の映像です。
わずか3分44秒の弦楽器を中心とした録音室でのセッション映像ですが、その短さのなかに、ひとりの人間が抱える「ぐちゃぐちゃさ」のすべてが詰まっています。
「Just A Mess」は、ひとりで街をさまよいながら別れた相手の家のドアの前に立ち、それでも会いに行かずにはいられない自分を描いた楽曲です。
誰かによって変わってしまった自分、ひとりでいることへの恐怖、もう戻れないとわかっていながらその人だけが「家」のように感じられるという感覚。
その全部が、トーンズ・アンド・アイの声ひとつで切り取られています。
楽器の音を最小限に抑えたシンプルな演奏形式は、この曲の感情をさらに強く際立たせます。
分厚いバンドサウンドに守られることなく、録音室の静寂のなかで剥き出しになった彼女の声は、震える手や雨が上がったあとの不安な静けさを、まるで自分自身の体験のように感じさせます。
トーンズ・アンド・アイは「ダンス・モンキー」で一躍世界的な名声を得たアーティストですが、この映像には商業的な成功とはまったく無関係な、ただ誠実に痛みを歌うひとりの人間の姿があります。
「友達には大丈夫だと嘘をついた」「ひとりが怖くて仕方ない」
んな感覚を、誰もが一度は経験したことがあるはずです。
この映像を観始めたら、最後の「feels like home」という言葉が静かに録音室へと消えていくその瞬間まで、とくに目を離すことはできないはずです。
まだ観ていない方には、今すぐ再生することをオススメします。




























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